脱税でなく節税【2025-06-13更新】 | 八千代市・佐倉市の不動産のことなら川島不動産
脱税でなく節税vol.206
6月6日に著名不動産投資家による、消費税の不正還付が疑われている裁判の初公判が開かれたとの記事を目にしました。私の知らない人でしたが80法人、120超の物件数、資産200億円規模という事で、不動産投資家の間では相当な有名人だったようです。本人は容疑を否認しているようですが、そのやり方は金地金スキームと言われております。今では出来なくなっておりますが、不動産投資における消費税還付の方法として、過去に自販機スキーム、金地金スキームがありました。
そもそもの消費税の仕組みですが、私ども課税事業者である川島不動産に置き換えますと、お客様から頂く売上である仲介手数料、管理手数料等には消費税が加算されております。お客様からお預かりした消費税を、私ども事業者がお客様に代わって税務署に申告します。そして、当然ですが事業者である川島不動産も、不動産を仕入れるとき、広告費等を支払うときには、消費税を支払っております。会社は基本的には利益を出して、継続していかなければなりませんので、シンプルに考えれば、仕入れで支払う消費税より、売上から預かる消費税が多くなるはずです。そして、その差額を事業者が税務署に収めるという形になります。それとは反対に、売上よりも仕入れで支払う消費税が多かった場合には、全てではありませんが、会社は赤字の可能性が高いと言えます。そのような場合には、先ほどとは逆で支払いすぎた消費税が還付されます。もちろん実際の計算はこんなに単純ではありませんし、色々な要件が絡んできます。
冒頭の自販機スキームですが、賃貸物件が完成するまでの間に非課税の賃料収入を計上せずに、自販機の課税売上を計上することによって、売上と仕入れにかかる、消費税の差額の還付を受けるというスキームになります。不動産を購入(仕入れ)する場合、土地は非課税ですが、建物には消費税がかかります。仮に建物が1億円であれば1千万円の消費税がかかります。それが、たかが知れている自販機の売上で還付されるとなれば、不動産オーナーには大きな金銭的メリットになり、当時は多くの方が行っておりました。もちろん当局も問題視し、平成22年度、28年度の税制改正によりこのスキームは完全に出来なくなりました。そこで新たなスキーム、金地金スキームが行われることになります。詳述は避けますが、いずれにしても本来の不動産経営とは関係のない課税売上高を発生させ、還付を受けるというものになります。このスキームも令和2年度の税制改正により出来なくなっております。
今回の訴訟は金地金の架空売買ということなので、金地金の取引を実際には行っていなかったのでは、と疑われている訳であり、上記金地金スキームが否定されているわけではありません。いつの時代も法の抜け道を見つける人はいて、それはそれで才能だと思います。調べ上げた努力の結果であり、否定するつもりは全くありません。そして、不動産取引においては、法律的な知識だけでなく、税金の知識も非常に大切だという事です。違法な脱税指南はもってのほかですが、これからも様々なスキームが出来ると思います。情報の収集はしっかり続けたいと思います。 塩田了丈